細やかな「いびつ」
高知県出身、倉敷芸術科学大学にて陶芸を学ぶ。京焼のスタジオにて働いたのち、帰郷、独立し自身のスタジオを建てる。繊細な造詣へのこだわりが特徴的な西田宣生の作品は国内で、第 57 回日本伝統工芸展入選や第 32 回田部美術館大賞「茶の湯の造形展」大賞をはじめとする、数多くの賞を受賞する気鋭の陶磁器作家。
細やかな「いびつ」
西田宣生は、どこか「いびつ」な人間らしさを纏った作品を作り上げる。非常に繊細で「いびつ」な形は、恐らく、0.1 ミリ程度のズレにより全体の印象を大きく変えてしまうのではないかと思われるものである。西田宣生の作品には、細やかな「いびつ」さが宿っている。
西田宣生の作品の大きな特徴は二つある。一つには、刷毛目のような磁器表面に浮かび上がる模様。そしてもう一つは上記の繊細な「いびつ」な磁器の形状である。
まず、模様は、一見すると一筆で描かれているようだが、実際には刷毛で塗料を塗りをスポンジなどで拭う作業を何度も重ねられたものである。西田は、この拭う作業を「白く塗る」と語るように、磁器空間のなかで、この刷毛目模様は白を含む濃淡によりリズムと立体感が生まれている。
西田宣生の磁器作品は、この刷毛目模様に目が行きやすいが、見れば見るほどに、繊細で「いびつ」な形状に、センスや技術力の高さをうかがうことができる。西田は、「自分のコンプレックスが形になっている」と語る。それは、人間らしさへの憧れだと言う。元々、機械的な完璧に近い造形を作り上げることを得意としてきた。完璧な造形とは聞こえがいいが、そこには、人間の感性をくすぐる「ユーモア」が見えなかった。そして、人間らしい歪みをまとった面白さに惹かれていった。中心がややずれて傾いている鉢や、波打つような花入など、繊細な「いびつ」さが作品の一つ一つに表れている。この「いびつ」な面白さは、偶然生まれるだけではなく、機械的なものを作り上げることができる高い技術力があってこそ表出される。ただ面白いだけではない。長く陶芸に向き合ってきた、手業があって初めて、洗練されたユーモアのある磁器作品が出来上がるのである。
このシンプルながらも特徴的な刷毛目の模様と西田の形状へのこだわりと相まって、西田らしい、人間味のある「いびつ」さを纏った作品となるのである。
西田 宜生
略歴
1975 年 高知県生まれ
2000 年 倉敷芸術科学大学工芸学科陶芸コース卒業
2001 年 京都市工業試験場陶磁器コース本科終了
2002 年 京都府立陶工高等技術専門学校成形科卒業
2004 年 高知県南国市にて独立
2014 年 個展 高知大丸
2016 年 個展 柿傳ギャラリー
2024 年 個展 銀座一穂堂
一穂堂 岡村 陽平