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物語のある絵付け

竹内瑠璃, Ruri Takeuchi
京都で陶芸絵付けの勉強をしたのち、石川県の九谷焼の絵付け師の元に弟子入り。その工房で、現在素地を担当している西田健二と出会い、西田健二の素地に絵付けをしている。染付や上絵付けなど様々な技法を用いながら伝統的ながらも、デザイン性、物語性の高い独自の表現を確立している。

 

物語のある絵付け

竹内瑠璃の作品の特徴として自然や動物の細かな描写がある。それは、天性の細かな超絶技巧を得意とする彼女のオリジナリティだ。その絵に命を吹き入れる色彩は、絵の具に透明な色合いを入れ、淡い中間色の色遣いによって生まれ柔らかな気品が垣間見える。

自然や、動物の細かい描写は竹内瑠璃の見てきた景色や好みが隠れている。小さな頃から動物や植物などを繊細に描くことが好きだったと語る。そして、学生時代に幾何学模様など、様々な学びの中で竹内先生の今の表現が生まれていった。
竹内瑠璃, Ruri Takeuchi

また、日本の四季と、自然や動物は密接な関係がある。都会では感じにくいかもしれないが、私たちの生活は季節とともにある。そして、季節を私たちに告げるものは自然や動物だ。春を告げる桜、初夏の彩りを感じさせる藤など、竹内先生の絵付けには季節の物語が描かれている。そこには、鑑賞者を楽しいませたいという竹内瑠璃の思いやデザイン性が含まれているのである。香合や水差しは、作品に触れる毎に物語が姿を現す。表面に描かれた花々、蓋を開けると内側や蓋の中にも花などが描かれており、一つの作品の中で段階を踏んだ物語を楽しめる。この物語性は、日本の古典文学などに由来しており、まるで、物語絵巻を触れて体験できるようである。季節を告げる自然が隣になくても、竹内瑠璃の作品によって私たちの季節が顔を出すかのようだ。

竹内瑠璃, Ruri Takeuchi

このように、竹内瑠璃の作品には、使う陶器としてだけで終わらせない「観る陶磁器」としてのデザインが隠れている。そこには、作品を観る人、手にする人、一人一人が楽しめることを目的とした竹内瑠璃の体験のデザインが表現されているのではないだろうか。

 

竹内 瑠璃

略歴
奈良県大和郡山市生まれ
2006 年 京都伝統工芸大学校・陶芸コース卒 山本長左氏に師事、陶磁器絵付けを学ぶ
2012 年 個展 ( 銀座一穂堂 )
2013 年 石川県小松市にて独立
2017 年 個展 ( 銀座一穂堂 )
2024 年 竹内瑠璃・西田健二 二人展(銀座一穂堂)
現在 石川県と奈良県で制作活動を行う

 

 

一穂堂 岡村 陽平