白の技巧
素地師の家系に生まれ妙泉陶房に修行、成形・型打ちを学び、今最も九谷で信頼されている陶芸家。
白の技巧
非常にシンプルな白に形を生み出すことは、シンプルだからこその難しさがあると語る。
西田健二は九谷で信頼の厚い素地師として活躍している。彼は素地師として三種の土を用いる。やや暗めの風合いを出し西田の素地師としての作品を作り出す九谷、黄味がかった風合いの京都仁清、作家として制作される暖かみのある白磁、熊本天草陶石。西田作品には白磁の器、素材や技法と真伨に向き合った作家の世界が器一つ一つに表れている。
白には様々な物語が宿る。上品さや、可憐さ、または、シンプルな静謐さなど。その特性を活かすには素材の特性や、技巧に向き合ったもののみが与えられる白の空間があるだろう。西田の作る白磁の作品には、色彩が宿るように思える。
非常にシンプルな形状であるが、その中で陰影が生まれ立体感が出る。この陰影による立体感が効果的に生まれるように計算されている。
まず、アーティストとしての西田作品の白磁は、九谷焼で使われる土ではなく、熊本の天草陶石を用い、酸化・還元や炉窯の温度も理想的な白が生まれるように計算されている。九谷の素材では、暗めの白となり陰影の効果は薄いが、天草陶石によって形成された白磁は温かみのある淡い白となり、光によって陰影のグラデーションが生まれることで立体感や、白の絶妙な色の変化を楽しめるものとなっている。
この陰影による白の淡い変化を楽しめる作品は、茶碗や香炉、花瓶だろう。白が持つ特有の美しさが華やぐように曲線によって表現されている。
一方で、香合などの幾何学的な作品は、海外の建築作品を参考にしている。モダン建築の洗練された形状を取り入れることで、光と陰のエッジの効いたコントラストが生まれ、見る楽しさがありながらもシンプルで機能的な仕上がりとなっている。それは、単調な空間に思わぬ京楽を与えているかのようだ。
白磁に限らず、竹内瑠璃の作品の形成は西田健二によって成されている。九谷焼きに関しては釉薬が映えるよう、絵付けとのバランスが良くなるように作られている。また、2024 年竹内・西田二人展で展示された、貝桶や松の茶碗などは京都仁清の粘土によって作られた土物の作品となっている。このように、西田健二は、素地師として白に対して造詣が深いため、白磁の特性が生きるデザイン性の高い作品が生まれたのではないだろうか。
西田 健二
略歴
1973 年 石川県旧寺井町の九谷焼絵付師の家に生まれる
1989 年 石川県立工業高校工芸科窯業コース卒業
1992 年 父・西田伸也に師事する傍ら、地元の土物九谷焼美山窯にて成型を学ぶ
1994 年 磁器の窯元(妙泉陶房)に勤め、成形全般・型打を習う
1998 年 独立し、西田製陶所を設立、その後多数のグループ展などに出展
2024 年 竹内瑠璃・西田健二 二人展(銀座一穂堂)