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中村 康平

中村康平 赤の野望

2023年5月26日〜6月4日

Exhibition

展示風景

陶芸家として生きて来た私の体の中のエネルギーには大きく2種ある。
1つは若き日 ニューヨークで発表した世紀末の毒気を持つ造形と もう1つは日本の古典への回帰 静かな茶碗への憧れ、写しの世界である。
これはそのまま 天下を取るために戦う強い武将に対して、生涯を1つの釜と数個の茶碗しか使わず簡素極めた茶人 丿貫(へちかん)との対比でもある。

今回はその丿貫が現代人に向けて物申しているような 地面に杖を突きさす「丿貫の杖」を軸にしてみた。
そして「現代の古典」茶碗を作りつつも、自由な発想の鑑賞を目的とする茶碗を作ろうと思い立った。
鑑賞といえば絵画、日本の絵画といえば琳派、琳派といえば青海波。
自由な発想は順を経て赤楽茶碗にたどり着き、独自技法の開拓を重ね 沢山の失敗茶碗を作リ続けることになる。
今回の赤楽茶碗の鮮やかな赤色は 丿貫が北野茶会でデビューした時、秀吉に見染められたあの大きな赤い野点傘、その赤なのかも知れない。

中村 康平

赤の野望

中村康平は赤楽を焼いた。
薄暗い茶室で鉄釜から立ち昇る白い湯気を見ながら 茶の湯を愉しむ……そんな赤楽茶碗ではない。

彼は1992年、ニューヨーク屈指のギャラリー ガース・クラークで世紀末のような陶のオブジェを発表、その作品は話題になりメトロポリタン美術館に収蔵された。
中村康平の華々しいコンテンポラリーアートのデビューである。
彼はアメリカで騒がれると逃げるように金沢に帰り 次は長次郎や光悦の茶碗の写しを作リ出す。 古美術に執着して様々な茶碗の写しを作った。
また、2012年 金沢21世紀美術館の「工芸未来派」では大きなオブジェを制作、コンテンポラリーアートの才能の健在を 国内外に知らしめた。
2013年 林屋晴三を唸らせた平成井戸は 菊池智美術館の茶碗展で主役の座を奪い取った。
彼は常に話題の中にいる。

令和5年、中村康平の次の野望は赤、青海波を纏った赤楽を造っている。
デコラティブで鑑賞する為の茶碗、桃山時代の侍達が喜びそうな見た事もない赤い茶碗。
彼の挑戦と野望はまだまだつづく。

青野恵子

Kohei Nakamura

中村 康平

中村氏は、陶芸を学び始めて間もない頃、瀬戸の美術館で光悦の楽茶碗に出会い、足がすくむような感動に揺り動かされ、以来ひたすら実物に近づくため写しに徹したと言います。
中村氏が作陶する光悦と長次郎の写しは、写しという世界に留まらず中村康平の独自の美の世界へと誘ってくれます。

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