泰平の江戸時代から廃刀令を経て明治期に隆盛を極め、国策として盛んに輸出された日本の金属工芸。
しかし時代の流れとともに次第に廃れ、美術工芸の職人たちも姿を消してしまった。
1979年生まれの須藤拓は 金属の持つ美しさに惹かれこの道にすすんだ。
京都の土地柄、彼は 金工の古美術品修復で腕を磨き、今もその仕事で生きて来た。
細部にまで創り手の美意識がこめられたかつての名工たちの作品を修復しながら学んだものは、多くの技術だけにとどまらず長い時間を経た金属工芸品の魅力だった。
金工は制作者の手を離れてからの表情の変化が大きく、それが素材の魅力でもある。
そのため 金 銀 銅 鉄 赤銅などの伝統的な素材を用いることと、鋳金、鍛金、彫金、象嵌などの伝統的な加飾技法にこだわって制作している。
彼にとって初めての個展は 錦のような表面の金属の茶入、香合などと、銀で 日本の 季節の風情を作った。
青野恵子